主要ポイント

  • 2023年5月、週休3日制に言及した正社員求人のシェアは1.1%で、2019年から2021年までの比較的安定した傾向から2.3倍に上昇。
  • 週休3日制に言及した正社員求人は、歯科や看護など医療関連の職種や、飲食やドライバーなど元々シフト制度に馴染みのある職種に集中しやすい。
  • 2023年5月、Indeedにおける仕事検索数のうち、週休3日制を検索した割合は、2019年1月と比べ1.8倍に上昇。

ワークライフバランスと働き方の柔軟性は、コロナ禍でに日本の労働者の主要な課題として浮上し、その試みの1つとして、週休3日制の導入が議論されています。

政府は2021年6月の「経済財政運営と改革の基本方針2021」の中で週休3日制の推進について触れています。また国家公務員で「週休3日制」を可能にする法改正を検討しています。さらに、いくつかの企業では、すでに週休2日制より休日日数が実質的に多い制度を導入しています (厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」第2表 主な週休制の形態別企業割合)。

しかし、週休3日制への移行はまだ始まったばかりです。2023年5月、日本の正社員の求人において、週休3日が可能な求人は1.1%でした。

本レポートでは週休3日制の正社員求人動向及び求職者の関心について分析します。これらは働き方の柔軟性とワークライフバランスに関する雇用主と求職者の動向を知る上で重要な情報となります。

週休3日制を言及する求人は2022年に入ってから増加

2023年5月、Indeedに掲載された正社員求人のうち、「週休3日制」「完全週休3日」「週4日勤務」といったフレーズ(以降、総称して「週休3日可」とする。)を求人情報に明示したものは1.1%で、2019年から2021年の3年間の平均0.5%から2倍超となりました。この値は未だ水準としては大きくはありませんが、英国オーストラリアと比べると大きな値を示しており、日本は先進国の中で「週休3日制」の取り組みが決して遅れているわけではありません。

週休3日の言及に対して実際に取り決めている休暇日数や意味合いは企業によって異なるため、休暇程度に統一性のあるフレーズ「完全週休3日」に絞った場合の割合も算出しました。

「完全週休3日」を言及した求人の割合はわずか0.14%と、「週休3日可」の言及に比べると大きく見劣りするものの、それでも2019年1月の0.04%から3倍になっていることが確認されます。

「週休3日可」「完全週休3日」に言及する正社員求人の割合推移。期間は2019年1月から2023年5月まで。縦軸の範囲は0%から1.2%。
「週休3日可」「完全週休3日」に言及する正社員求人の割合推移。期間は2019年1月から2023年5月まで。縦軸の範囲は0%から1.2%。

歯科、ドライバー、保育の求人が最も「週休3日制」に言及

職種カテゴリ別に正社員求人における週休3日制の言及を見ると、歯科で最も言及割合が大きく、2019年の7.4%から2023年には9.6%に増加しました。続いて、ドライバーや保育は2023年時点でそれぞれ5.2%、4.7%であり、2019年から4.5ポイント上昇と最も大きく変化しました。その他、飲食、看護、美容・健康などが上位に並びます。医療関連や元々シフト制度に慣れているような職種で、アルバイト・パートのみならず、正社員においても取り入れていると考えられます。

完全週休3日の言及だけに絞った場合においては、歯科(2.1%)や獣医(0.3%)、美容・健康(0.3%)など上位の職種カテゴリが「週休3日可」のそれと大きく変わらない一方で、人事(0.4%)が上位に来ることが特徴的です。

コロナ禍前の2019年と比べると、2023年は上記いずれの職種カテゴリも言及割合を伸ばし、その成長は「週休3日可」の方が「完全週休3日」よりも大きいことが確認されます。週休3日制の導入機運が全体的に高まる中、多くの企業は、「完全週休3日」より選択的でフレキシブルな「週休3日可」を採用してきた経緯があると示唆します。

2023年1月から5月の期間で、正社員求人のうち、「週休3日可」「完全週休3日」の言及割合が大きい順に上位7職種カテゴリを並べたもの。青点は2019年1月から5月の期間での言及割合を表す。数字は各言及割合を表し、小数点第2位を四捨五入した値を記載。
2023年1月から5月の期間で、正社員求人のうち、「週休3日可」「完全週休3日」の言及割合が大きい順に上位7職種カテゴリを並べたもの。青点は2019年1月から5月の期間での言及割合を表す。数字は各言及割合を表し、小数点第2位を四捨五入した値を記載。

「週休3日制」に言及した求人では、残業が多くなる傾向は観測されない

週休3日制の場合には、1日あたりの残業時間が増える懸念があるかもしれません。残業の有無についてIndeedの求人データを確認すると、週休3日制に言及した正社員求人のうち、38%の求人が「残業なし」あるいは「残業月平均20時間以内」に言及していました。同様に、完全週休3日に言及した正社員求人では、46%の求人が残業がないあるいは少ないことを言及していました。一方、週休3日の言及のない求人の同割合は21%です。

他の要因の影響などがあるため、この結果は、必ずしも週休3日の方が残業が少ないことを示すわけではありませんが、少なくとも週休3日制の導入によって残業が増えるような傾向(かえってワークライフバランスが悪化する傾向)は、Indeedの求人情報からは観測されていないことを示しています。

「週休3日」の有無別に「残業なし」あるいは「残業月平均20時間以内である」ことに言及した割合を図示したもの。青線が、週休3日の正社員求人における「残業なし」あるいは「残業月平均20時間以内である」の言及割合を表す。同様に、赤線が完全週休3日の正社員求人における「残業なし」・「残業月平均20時間以内である」の言及割合、黄線が週休3日でない(と明記されていない)正社員求人における「残業なし」・「残業月平均20時間以内である」の言及割合を表す。
「週休3日」の有無別に「残業なし」あるいは「残業月平均20時間以内である」ことに言及した割合を図示したもの。青線が、週休3日の正社員求人における「残業なし」あるいは「残業月平均20時間以内である」の言及割合を表す。同様に、赤線が完全週休3日の正社員求人における「残業なし」・「残業月平均20時間以内である」の言及割合、黄線が週休3日でない(と明記されていない)正社員求人における「残業なし」・「残業月平均20時間以内である」の言及割合を表す。

「週休3日制」に対する求職者の関心も確実に高まっている

求職者の関心を表す週休3日制の検索割合は、全体の検索の0.027%ですが、2019年1月の0.015%と比べて1.8倍に増えています。リモートワークフレックスタイム制への関心と同様に、求職者はフレキシブルな仕事を検索することを好むようです。割合が高くない理由には、求職者は通常、職業や勤務地、あるいは雇用形態といった求人の目立つ特徴を検索することが挙げられます。

2019年1月から2023年5月までの週休3日制に関するキーワードを検索した割合の推移。縦軸の範囲は0%から0.03%まで。
2019年1月から2023年5月までの週休3日制に関するキーワードを検索した割合の推移。縦軸の範囲は0%から0.03%まで。

「週休3日制」導入による最近の結果

最近のグローバルトライアルの調査結果によると、「同じ給料でより少ない日数」で働く週休3日制は、参加企業の収益増加、従業員の病欠の減少、従業員のメンタルヘルスの改善に繋がったことがわかりました。しかしこのようなパイロット調査の評価方法の妥当性に関して指摘がされていることも事実であり(Cuello (2023))、調査結果の信頼性やコンセンサスを十分得るにはまだ発展途上の段階でしょう。Hamermesh et al. (2017)など、日本を対象とした先行研究では、労働時間の短縮は、労働者とその配偶者のウェルビーイングを向上させている結果がでています。このような調査結果を踏まえて、議論が活発化し、世界的にも少しずつ導入の兆しが高まってきています。

現時点では、求人での週休3日制の言及割合及び求職者の検索割合ともに、発展途上であることが確認されました。しかし、このような試みが支持され、日本の企業が同様の「同じ給料でより少ない日数」の働き方を実施するようになれば、勤務時間削減の快適さを求める求職者の検索は、今後大幅に増加することも十分考えられます。

職場の柔軟性とワークライフバランスは、雇用者と就業者の双方にとって、引き続き重要な課題です。「同じ給料でより少ない日数」で働くことは今すぐには難しいかもしれませんが、より良いワークライフバランスを提供し、そのための仕事の関心が段々高まってきていることは明らかです。

方法

正社員は雇用形態の中で正社員、時短正社員といった区分で無期雇用を表す。正社員以外では従来からシフトを自ら選択できるため、今回の「週休3日制」のコンセプトに沿う目的で、正社員の求人だけに絞って分析を実施している。

「週休3日制」「完全週休3日」「週4日勤務」の言及がされている場合、「週休3日可」として集計している。

Hamermesh, Daniel S., Daiji Kawaguchi, and Jungmin Lee. 2017. “Does Labor Legislation Benefit Workers?Well-Being after an Hours Reduction.” Journal of the Japanese and International Economies, 44, 1–12.:日本と韓国における、労働時間とウェルビーイングの関係を調査。
Hugo Cuello. 2023. “Assessing the Validity of Four-day Week Pilots.” JRC Working Paper Series on Social Class in Digital Age, European Comission.:週4日勤務のパイロット調査方法を評価し、より良い評価方法に関する提案を実施。