キーポイント

  • Indeedの日本での「AI」関連の仕事検索は、2022年11月のChatGPT登場以降、およそ13倍に増加。
  • AI関連の仕事検索のうち、4件に3件は、「AI」単独ワードではなく「AI+職種/働き方」という連語での検索である。求職者が単なる抽象的な技術にとどまらず、具体的な仕事観をもって求職している。
  • AIの仕事を検索する求職者が実際にクリックする求人の職種は多様化。AIの仕事検索を通じて、テック職の求人をクリックする割合は、66.2%(2023年)から35.4%(2026年)へと低下する一方で、非テック職では33.8%から64.6%へクリック割合が上昇:アート、メディア、マーケティング、経営、コンサルティング、教育、事務といった非テック分野が拡大。
  • プロンプトエンジニア、データアノテーション、AIトレーナーといった、AIならではの新しい職種もデータ上に現れている。

AI関連の仕事の検索は、一直線ではなく、波状に進む

ChatGPTが公開されたのは2022年11月ですが、求職者の反応が現れるまでには数か月を要しました。検索は2023年2月から増加し始め、同年半ばにはおよそ3倍に達したのち、GoogleやAnthropicなどの新しいモデルが次々と登場するなかでも、2024年2月までは横ばいで推移しました。2024年2月に二度目の増加が始まり、再びいったん落ち着いたのち、2025年初頭に急上昇し、2026年には過去最高の水準へと伸びています。2026年半ばの時点で、求職者の検索数は前年末からおよそ2倍、2022年比ではおよそ13倍の水準に達しています。

注目したいのは、すべてのモデルリリースが同じように検索を押し上げるわけではないという点です。求職者の関心は、細かな更新が続くことよりも、社会的に大きな話題となった出来事や、性能の明確な段差を示すリリースに、より強く反応しているように見えます。下図の破線は、文脈として主要なモデルリリースを示したものであり、個々のリリースが検索の変化を引き起こしたことを示すものではありません。

AI関連職種の検索はChatGPT登場以降13倍に増加(30日移動平均、2022年1月=100として指数化)。データ対象期間は2022年1月から2026年6月まで。破線の縦線は主要なモデルの公開時期を示し、横軸での小さな目盛は、スペースの都合上省略されたモデル公開時期を示す。
AI関連職種の検索はChatGPT登場以降13倍に増加(30日移動平均、2022年1月=100として指数化)。データ対象期間は2022年1月から2026年6月まで。破線の縦線は主要なモデルの公開時期を示し、横軸での小さな目盛は、スペースの都合上省略されたモデル公開時期を示す。

では、求職者はどのようなモチベーションで「AI」を検索しているのでしょうか。

求職者は、「AI」というワードを、具体的な職種や働き方・条件と組み合わせて検索している

Indeedのデータでは検索フレーズ全体を確認できるため、「AI」と一緒に仕事検索される言葉を見ることができます。AI関連の仕事検索のうち、およそ4件に3件(73.4%)は「AI」や「生成AI」を、より具体的な語と組み合わせた連語での検索です。単独の「AI」「生成AI」だけで検索されるケースは、4分の1強にとどまります。つまり、多くの求職者は抽象的なことではなく、具体的な仕事を思い描いて検索していることになります。

連語をみると大きく2つのパターンに分類されます。1つ目は具体的な職種で、エンジニアを筆頭に、プロンプトエンジニア、データアノテーション、AIトレーナー、画像生成、校正といった、AIと関連する職種が並びます。2つ目は働き方で、在宅・リモート、未経験、副業、インターンといった言葉が目立ちます。AI関連の仕事は専門性が高く難しいものが多いなかで、これらの言葉を使って、求職者は、少しでも参入しやすい条件を手がかりに、経験が浅くても現実的に応募できる仕事を探しているように見えます。

2022年-2026年の「AI」と併せて最も頻繁に検索された単語(上位15位)。棒グラフは、「AI」と少なくとも1つの別の単語を組み合わせた検索(共起検索)全体に占める各用語の割合を示す。「AI」や「生成AI」という単語単独での検索は除外。
2022年-2026年の「AI」と併せて最も頻繁に検索された単語(上位15位)。棒グラフは、「AI」と少なくとも1つの別の単語を組み合わせた検索(共起検索)全体に占める各用語の割合を示す。「AI」や「生成AI」という単語単独での検索は除外。

AIというワードで検索する求職者が関心を持つ職種は、テック職の枠を超えて広がっている

AIというワードで検索した求職者が実際にクリックした求人を分析すると、その関心の職種構成がどのように変化したかを見ることができます。

興味深いことに、AI関連の職務への関心は、もはや技術職に集中しているわけではありません。2023年から2026年にかけて、その比率は実質的に逆転しました。AI関連の求人検索において、求人クリック数全体に占めるテック職求人へのクリック割合は66.2%から35.4%へと低下した一方、非テック職求人へのクリック割合は33.8%から64.6%へと上昇しています。具体的には、ソフトウェア開発が全体のクリック数の48.7%から30.3%へ、データ・アナリティックスが16.2%から3.4%へと減少しました。かつてこれらの分野に集中していた関心は、現在では芸術・エンターテインメント(9.0%)、事務(7.3%)、メディア・コミュニケーション(6.9%)、マーケティング(4.9%)、教育(4.2%)、コンサルティング(4.1%)、経営(2.9%)など、より広範な非テック職へと分散しています。

AI検索者のクリックの職種構成、2023年と2026年(1〜6月)の比較。各パネルは、AI検索者のクリックに占める各職種カテゴリのシェア(各年で合計100%)を示し、テック/非テックで色分け。「未分類」は、特定の職種に分類することが難しい一般的な職種名などを指す。(例:特定の職種への分類が困難な一般的な職種名など)。シェアが1%未満はラベル非表示。
AI検索者のクリックの職種構成、2023年と2026年(1〜6月)の比較。各パネルは、AI検索者のクリックに占める各職種カテゴリのシェア(各年で合計100%)を示し、テック/非テックで色分け。「未分類」は、特定の職種に分類することが難しい一般的な職種名などを指す。(例:特定の職種への分類が困難な一般的な職種名など)。シェアが1%未満はラベル非表示。

この変化には、求職者自身の関心のシフトが当然反映されています。加えて、非テックの職場でもAI活用を訴求する求人が増えたことで、そもそもクリックできる非テックのAI求人自体が増えていることも要因です。いずれにしても、求職者は非テック分野におけるAI関連の仕事を、積極的に求めるようになってきているように見えます。

より細かい職種名で2026年のクリック数分布を見ても、非テックの関心が比較的多くなっていることが確認されます。「AIエンジニア」は単独で最も多くクリックされる職種(15.7%)ですが、それに続いてクリックされる職種には、コンサルタント、クリエイター、講師、データ入力、動画編集といった非テックでの職種が並びます。従来型のエンジニア系の職種は、その後に登場します。

AIの仕事を検索する求職者が最も多くクリックする職種詳細(2026年・上位15職種)。棒グラフは、AIの仕事を検索する求職者が求人をクリックする総数に占める各職種のクリック割合を示す。
AIの仕事を検索する求職者が最も多くクリックする職種詳細(2026年・上位15職種)。棒グラフは、AIの仕事を検索する求職者が求人をクリックする総数に占める各職種のクリック割合を示す。

一過性の好奇心から、持続的で幅広い関心へ

AIに対する関心は、一過性の好奇心という段階を過ぎ、より持続的で、労働市場全体へと幅広く浸透してきているように見えます。日本の求職者は、以前よりもはるかに多くAI関連の仕事を探すようになっただけでなく、その仕事を具体的な言葉で思い描くようになり、関心はテック職種という一角から、多様な職種へと広がってきました。プロンプトエンジニアやアノテーター、トレーナーといったAIならではの新しい職種が現れる一方で、クリエイティブやメディア、マーケティング、事務といった「AIに隣接する」仕事への関心も高まっています。AIが経済全体に浸透し続けるにつれ、求職者の関心も、それに合わせてさらに広がっていくと考えられます。

方法

検索系列について。 Indeed日本(PCおよびモバイル)の日次検索のうち、正規化した検索クエリが次のいずれかに一致するものを集計:単独の「ai」、「ai」を含む連語(例:「ai エンジニア」「在宅 ai」)、「生成ai」、「artificial」と「intelligence」の組み合わせ、「人工」と「知能」の組み合わせ。これらの条件を1つの日次集計でまとめ、複数の条件に該当する検索を二重に数えないように集計。系列は30日移動平均とし、2022年1月を100として指数化。

モデルリリースの記載について。 OpenAI、Anthropic、Google、DeepSeek、Microsoft等の主要なリリースのみを表示しており、網羅を意図したものではない(細かな版や小規模な改訂は概ね省略しています)。注記は、あくまで変化点を読み解くための文脈であり、特定のリリースが検索の変化を引き起こしたことを示すものではない。また、トレンドの変化と時期が重なるリリースであっても、それはモデルそのものではなく、より広い社会的な注目を反映している場合がある。

連語ワードについて 連語検索から「ai」「生成ai」単独のトークンを取り除き、残ったフレーズを「連結語」として扱っている。シェアは連語全体に対して算出しており、連結語を持たない単独の「AI」「生成AI」は除外。

クリックの職種集計 クリックデータは、Indeedの日本の検索結果からのクリックに基づく。各クリックの背後にある検索クエリに、検索系列と同じAIキーワードの定義を適用し、AI検索者によるクリックを識別。ここでの「テック」は、ソフトウェア開発、データ&アナリティクス、ITシステム&ソリューション、およびヘルプデスク系のカテゴリと定義し、それ以外を「非テック」とする。図3および図4は構成比分布であり、クリックの絶対数ではないことに留意。AI関連のクリック総数は2023年から2026年にかけて大きく増加しているため、シェアの低下が必ずしもクリック数の減少を意味するわけではない。シェアはそれぞれの期間の総数に対して算出。