本稿では、月給に関する求人検索を分析します。時給検索の分析結果については別途こちらをご参照ください。

主要ポイント

  • 2025年11月の検索月給(全国加重平均)は364,053円、前年同月から1.8%上昇。
  • 検索月給の上昇率は物価上昇に強く連動し、実際の名目賃金上昇率と比べて、物価上昇により反応する動きが確認される。
  • インフレが2%前後で推移する限り、検索月給の上昇トレンドも継続する見込み。

検索された月給は平均36.4万円に到達

昨年の結果から更新した結果、Indeed上で求職者が検索する月給(検索月給) の加重平均値は、2025年11月時点で364,053円に達しました。これは前年同月(2024年11月:357,534円)で1.8%、物価が上昇し始めた2021年11月(332,950円)から9.3%の上昇です。2025年5月以降、毎月安定的に36万円以上を維持しています。

2025年9月は367,603円とさらに高い値を示しており、前年同月比では3.5%上昇、対2021年9月比では12.0%の上昇でした。このペースは、一般労働者の所定内給与(平均)の水準だけでなく上昇率(対前年同月比2.5%、対2021年9月比9.0% (2021年9月: 314,758円、2024年9月: 334,495円、2025年9月(最新月)

):343,000円)も上回り、求職者が以前よりも高い賃金を求めていることを示しています。

一方で、2021年中頃までは、検索賃金と実際の所定内給与ともに全体的にフラットな傾向を示しており、わずかな上昇は見られるものの、大きな変動はありませんでした。

Indeedにおける検索月給の加重平均値、一般労働者の平均月給実績(厚生労働省「毎月勤労統計調査」より)の推移。季節調整なしで、期間は2019年1月から2025年11月までを表示。ただし一般労働者の平均月給実績については、最新月となる2025年9月までであることに留意。
Indeedにおける検索月給の加重平均値、一般労働者の平均月給実績(厚生労働省「毎月勤労統計調査」より)の推移。季節調整なしで、期間は2019年1月から2025年11月までを表示。ただし一般労働者の平均月給実績については、最新月となる2025年9月までであることに留意。

インフレーションと強く連動する検索月給

賃金の期待の高さは、本来労働市場の逼迫程度やインフレーションのみならず、求職者自身のパフォーマンスやスキルの自己評価、関心のある職種の市場価値の向上とも関係します。従って、理論的には、検索月給が1つの要素のみと強く連動するとは限りません。にも関わらず、結果として、検索月給の上昇率については、昨年の分析結果に引き続き、インフレーションのみで多くが説明されています。

CPI(消費者物価指数)と検索月給の上昇率を比較すると、両者が重なるように推移しています。物価上昇は2022年に始まり、2023年1月にCPIは4.3%とピークに達した後、2023年の多くの月で3%台を維持しながら徐々に緩和しました。2025年9月時点のCPIは2.9%となっています。

同様に、検索月給の上昇率においても2022年から顕著に上昇し、2022年後半から2023年12月までの多くの月で3%台で推移しました。2024年に入ってからは上昇率が鈍化し、2%前後で推移するケースが増え、2025年11月時点では1.8% (3か月移動平均で2.8%)を示しています。

Indeedにおける検索月給(加重平均値)の上昇率 、一般労働者の所定内給与の名目賃金上昇率(厚生労働省「毎月勤労統計調査」)、CPI (消費者物価指数:総合)、コアCPI (消費者物価指数:生鮮食品を除く総合)の推移。期間は2021年1月から2025年11月まで。ただし一般労働者の所定内給与の名目賃金上昇率と物価上昇率については、最新月となる2025年9月までであることに留意。
Indeedにおける検索月給(加重平均値)の上昇率 、一般労働者の所定内給与の名目賃金上昇率(厚生労働省「毎月勤労統計調査」)、CPI (消費者物価指数:総合)、コアCPI (消費者物価指数:生鮮食品を除く総合)の推移。期間は2021年1月から2025年11月まで。ただし一般労働者の所定内給与の名目賃金上昇率と物価上昇率については、最新月となる2025年9月までであることに留意。

一般労働者の所定内給与における名目賃金上昇率は上昇傾向ではあるものの、2022年及び2023年では、CPIや検索月給ほど高くはありませんでした。2022–2023年名目賃金上昇率が物価上昇に追随しなかった背景には幾つかの理由が考えられますが、重要なことは、求職者の月給に対する期待の方が、インフレーションに反応しやすいという点です。

今後もインフレとともに検索賃金の上昇率は2%前後で推移する見込み

昨年から物価の熱が冷めていない中で、検索賃金の上昇率も2%前後で推移し、物価上昇率と連動しています。物価上昇率も一定の上下動を繰り返しながらも、今後も2%程度のインフレーションが続くと予想される中、検索賃金上昇率が同様の上昇率で推移する可能性が高そうです。

方法

検索賃金の加重平均値の算定方法は以下の通り。

  • 月給では1万円刻みの値、時給では10円刻みの値を賃金帯として、賃金帯ごとに検索数及び賃金検索数全体に占めるシェアを計算。
  • 各賃金帯と上記シェアの掛け合わせで算出。

検索された月給の推移は、検索された時給の推移と同様に上昇基調であるものの、検索された時給の推移と比べて、やや異なる特徴がある。

1つは、区切りの良い月給の値(例:350,000円)に到達すると、その値の付近で一定期間安定する傾向がある。この背景には、給与レンジが広がりやすい月給の検索において、求職者は区切りの良い値を指定する傾向が強いことが考えられます。

もう1つは、いくつかの期間では短期的に下落することがある。これには、例えば、一般労働者の所定内給与(平均)の値の上下理由と同じように、季節性の問題が考えられる。本分析では基本給を対象としているが、ボーナスがある月かどうかで基本給の推移も影響してしまうことから、基本給に対しても季節性があると考えられる。その他、興味深いことに、2020年5月から一定期間、検索された月給の推移が下がっていたことが確認される。これはコロナ禍における第一回緊急事態宣言期間中で、経済活動が制限される中、労働者側がより高い賃金を希望しづらい、交渉力が弱い立場にあったことが影響していると考えられる。

検索賃金の上昇率と物価上昇率は高く相関している(2021年1月-2025年9月の相関係数0.83)。また、ベクトル自己回帰によるインパルス応答関数を算出すると、CPIの1%ポイント上昇に対して検索月給は即座に約0.4%ポイント上昇し、その効果は12ヶ月後まで持続する反応がみられる。
この結果は、求職者の賃金期待がインフレーションに敏感に反応する一方、実際の賃金改定には企業の意思決定プロセスや労使交渉などの時間を要することを示唆している。

CPIの1%ポイントの予期しないショック(突発的な上昇)が発生した場合、検索月給(上段)と実績賃金(下段)がその後の各期間(0〜12ヶ月後)でどの程度反応するかを示す。横軸は、ショック発生後の経過期間(ヶ月)、縦軸は賃金上昇率への応答程度を示す。青い範囲は95%信頼区間を表す。他のデータと合わせて、2021年1月から2025年9月までを分析期間としている。
CPIの1%ポイントの予期しないショック(突発的な上昇)が発生した場合、検索月給(上段)と実績賃金(下段)がその後の各期間(0〜12ヶ月後)でどの程度反応するかを示す。横軸は、ショック発生後の経過期間(ヶ月)、縦軸は賃金上昇率への応答程度を示す。青い範囲は95%信頼区間を表す。他のデータと合わせて、2021年1月から2025年9月までを分析期間としている。