主要ポイント

  • 2025年9月のIndeed掲載賃金上昇率は前年比+2.4%。前月(+2.5%)からわずかに減速したが、鈍化のペースは緩やかになってきている。
  • 消費者物価上昇率は2.7%と、依然として賃金上昇率を上回り、実質賃金の回復には課題が残る。
  • 求人シェアの大きいサービス関連職種(飲食、介護、運送など)でみられていた減速傾向に、足もとで緩和の兆し。

賃金上昇の鈍化は一服の兆し

2025年9月の求人掲載賃金上昇率は2.4%(前年同月比の3か月移動平均)の伸びと、前月の2.5% (前年同月比の3か月移動平均)からわずかに鈍化しました。ただし、減速ペースはこれまでよりも穏やかになっています。前年同月比では、前月の2.2%から2.3%とわずかに持ち直しました。

Indeed賃金トラッカー、すなわちIndeed掲載賃金上昇率の前年同月比(点線)とその3か月移動平均(実線)の推移を表す。期間は2019年1月から2025年9月まで。
Indeed賃金トラッカー、すなわちIndeed掲載賃金上昇率の前年同月比(点線)とその3か月移動平均(実線)の推移を表す。期間は2019年1月から2025年9月まで。

物価上昇率は8月時点で2.7%であり、同様に、前月からは落ち着いてきているものの、6月以降は賃金上昇率を上回る状況が続いています。

Indeed掲載賃金上昇率(3ヶ月移動平均)、CPI、Core CPIの推移。期間はそれぞれの最新確定年月(Indeed掲載賃金上昇率は2025年9月、CPIは2025年8月)まで記載。
Indeed掲載賃金上昇率(3ヶ月移動平均)、CPI、Core CPIの推移。期間はそれぞれの最新確定年月(Indeed掲載賃金上昇率は2025年9月、CPIは2025年8月)まで記載。

現状のペースでは、実質賃金の改善にはまだ時間を要する見通しです。一方で、インフレ率が依然として2022年水準(年平均 Core CPI 前年比2.3%)を上回っていること、労働市場の逼迫が継続していること、そして2026年春闘を見据えた賃金の前倒し上昇の可能性が、賃金上昇率を下支えする可能性があります。

求人シェアの大きい職種で減速が緩和または好転

求人シェアが大きい職種の多くで、賃金上昇率の減速が一服しつつあります。小売を除き、前月と比べて減速幅が縮小しました(0.1ポイント)。また事務については、前回に引き続き賃金上昇が加速しました。介護では、これまで減速が続いていましたが、9月は小幅ながら上昇率が加速しました。

  • 飲食:3.8%(前月比▲0.1pt)
  • 小売:3.3%(▲0.3pt)
  • 介護:2.3%(+0.1pt)
  • 運送:1.9%(▲0.1pt)
  • 事務:3.6%(+0.6pt)
  • 倉庫管理:1% (▲0.1pt)

これらの職種では、1年前に4%以上の高い上昇率を記録していたため、2025年の鈍化は自然な調整といえます。今後一定の賃金上昇率を維持できるかはまだ不透明ですが、減速のスピードが和らいできていることは注目に値します。

Indeed掲載賃金上昇率の前年同月比を、選択された求人シェアの大きい職種カテゴリ(飲食・事務・小売・介護・運送・倉庫管理)で表示。期間は2024年9月から2025年9月まで。
Indeed掲載賃金上昇率の前年同月比を、選択された求人シェアの大きい職種カテゴリ(飲食・事務・小売・介護・運送・倉庫管理)で表示。期間は2024年9月から2025年9月まで。

方法

Indeed掲載賃金上昇率を算出するためにアトランタ連銀の米国賃金上昇率トラッカーと類似のアプローチに従うが、個人ではなく求人を追跡する。まず、国、月、職種、地域、給与タイプ(時給、月給、年収)ごとに掲載賃金の中央値を算出する。次に、それぞれの国において、職種、地域、給与タイプの組み合わせごとに前年比賃金上昇率を計算し、月次分布を作成する。この分布の中央値をその国の賃金上昇率の月次指標とする。手法の更なる詳細事項及び更新情報はこちら

理論上は、名目賃金上昇率は、物価上昇率と労働生産性上昇率の合計にほぼ等しくなる。この枠組みは、日本銀行が目標とするような物価上昇率2%前後労働生産性が仮に約1%で成長する場合、物価安定と生産性向上と一致する名目賃金上昇率は約3%となることを意味する。

Indeed掲載賃金上昇率の算出においては、ベンチマークとなる賃金上昇率や労働需給との相関を、回帰分析等を通じて、常に検証している。詳細は、例えばAdrjan, P. and Lydon, R. (2024) 参照。

  • 日本の名目賃金上昇率(所定内給与)と2025年の春闘賃上げ率(日本労働組合総連合会が公表している春季生活闘争データ)との比較においては、前回からトレンドは大きく変わらない。
Indeed掲載賃金上昇率、春闘賃上げ率(日本労働組合総連合会が公表している春季生活闘争データの最終回答集計)、名目賃金上昇率(厚生労働省「毎月勤労統計調査」)の推移。期間はそれぞれの最新確定年月まで記載(Indeed掲載賃金上昇率: 2025年9月まで、春闘賃上げ率:年1回更新で2025年の回答による賃上げ率、名目賃金上昇率:2025年7月まで。) 。Indeed賃金トラッカーと名目賃金上昇率については3か月移動平均の推移(濃線)とその最新月の値を表示。春闘賃上げ率については年1回の変化のため前年比のみの推移かつ2025年の回答による春闘賃上げ率の値を表示。
Indeed掲載賃金上昇率、春闘賃上げ率(日本労働組合総連合会が公表している春季生活闘争データの最終回答集計)、名目賃金上昇率(厚生労働省「毎月勤労統計調査」)の推移。期間はそれぞれの最新確定年月まで記載(Indeed掲載賃金上昇率: 2025年9月まで、春闘賃上げ率:年1回更新で2025年の回答による賃上げ率、名目賃金上昇率:2025年7月まで。) 。Indeed賃金トラッカーと名目賃金上昇率については3か月移動平均の推移(濃線)とその最新月の値を表示。春闘賃上げ率については年1回の変化のため前年比のみの推移かつ2025年の回答による春闘賃上げ率の値を表示。
  • 国際的には、賃金上昇率は安定的に鈍化傾向
Indeed掲載賃金上昇率について、日本、米国、英国、ユーロ圏を並べたもの。 データは2025年9月まで。
Indeed掲載賃金上昇率について、日本、米国、英国、ユーロ圏を並べたもの。 データは2025年9月まで。