主要ポイント
- 2025年9月のIndeed掲載賃金上昇率は前年比+2.4%。前月(+2.5%)からわずかに減速したが、鈍化のペースは緩やかになってきている。
- 消費者物価上昇率は2.7%と、依然として賃金上昇率を上回り、実質賃金の回復には課題が残る。
- 求人シェアの大きいサービス関連職種(飲食、介護、運送など)でみられていた減速傾向に、足もとで緩和の兆し。
賃金上昇の鈍化は一服の兆し
2025年9月の求人掲載賃金上昇率は2.4%(前年同月比の3か月移動平均)の伸びと、前月の2.5% (前年同月比の3か月移動平均)からわずかに鈍化しました。ただし、減速ペースはこれまでよりも穏やかになっています。前年同月比では、前月の2.2%から2.3%とわずかに持ち直しました。

物価上昇率は8月時点で2.7%であり、同様に、前月からは落ち着いてきているものの、6月以降は賃金上昇率を上回る状況が続いています。

現状のペースでは、実質賃金の改善にはまだ時間を要する見通しです。一方で、インフレ率が依然として2022年水準(年平均 Core CPI 前年比2.3%)を上回っていること、労働市場の逼迫が継続していること、そして2026年春闘を見据えた賃金の前倒し上昇の可能性が、賃金上昇率を下支えする可能性があります。
求人シェアの大きい職種で減速が緩和または好転
求人シェアが大きい職種の多くで、賃金上昇率の減速が一服しつつあります。小売を除き、前月と比べて減速幅が縮小しました(0.1ポイント)。また事務については、前回に引き続き賃金上昇が加速しました。介護では、これまで減速が続いていましたが、9月は小幅ながら上昇率が加速しました。
- 飲食:3.8%(前月比▲0.1pt)
- 小売:3.3%(▲0.3pt)
- 介護:2.3%(+0.1pt)
- 運送:1.9%(▲0.1pt)
- 事務:3.6%(+0.6pt)
- 倉庫管理:1% (▲0.1pt)
これらの職種では、1年前に4%以上の高い上昇率を記録していたため、2025年の鈍化は自然な調整といえます。今後一定の賃金上昇率を維持できるかはまだ不透明ですが、減速のスピードが和らいできていることは注目に値します。

方法
Indeed掲載賃金上昇率を算出するためにアトランタ連銀の米国賃金上昇率トラッカーと類似のアプローチに従うが、個人ではなく求人を追跡する。まず、国、月、職種、地域、給与タイプ(時給、月給、年収)ごとに掲載賃金の中央値を算出する。次に、それぞれの国において、職種、地域、給与タイプの組み合わせごとに前年比賃金上昇率を計算し、月次分布を作成する。この分布の中央値をその国の賃金上昇率の月次指標とする。手法の更なる詳細事項及び更新情報はこちら。
理論上は、名目賃金上昇率は、物価上昇率と労働生産性上昇率の合計にほぼ等しくなる。この枠組みは、日本銀行が目標とするような物価上昇率2%前後、労働生産性が仮に約1%で成長する場合、物価安定と生産性向上と一致する名目賃金上昇率は約3%となることを意味する。
Indeed掲載賃金上昇率の算出においては、ベンチマークとなる賃金上昇率や労働需給との相関を、回帰分析等を通じて、常に検証している。詳細は、例えばAdrjan, P. and Lydon, R. (2024) 参照。

- 国際的には、賃金上昇率は安定的に鈍化傾向
