主要ポイント
- 2025年6月のIndeed掲載賃金の前年比上昇率は2.9%。前月よりさらに鈍化したが、鈍化スピードは緩やかな兆候が出てきている。
- 職種別の賃金上昇率は、前月と比べ職種によっては上昇が加速し、加速と減速が拮抗する展開になっている。春闘による賃金への反映が一巡し、業種・職種ごとの需給バランスや季節要因により、賃金の動きにばらつきが生じてきているとみられる。
賃金上昇は緩やかに鈍化
賃金上昇は2025年から鈍化に転じ、2025年6月は2.9%(前年同月比の3か月移動平均)の伸びと、前月5月の3.3%(前年同月比の3か月移動平均)からさらに鈍化が進みました。しかし、前年同月比だけでみれば2.74%と、前月の2.66%より、若干好転しました。一時的な可能性もありますが、鈍化がおさまる兆しを示しているかもしれません。
職種別の賃金上昇率は、加速と減速が拮抗するミックスな展開
2025年6月時点のデータでは、求人シェアが一定以上(0.1%以上)ある37職種のうち、約6割(62%)で賃金上昇率が前月より鈍化した一方で、約4割(38%)では加速または持ち直しの兆しが見られました。一時的な可能性もありますが、前回5月では8割の職種が鈍化を示したことを踏まえると、一部の職種では好転の兆しがあります。
歯科、マーケティング、医療技術、機械工学、不動産などでは、前月に続いて上昇率の加速が続いています。また、保育、医療事務、設備管理、経営、建設といった職種では、前月の鈍化傾向から反転し、改善が見られました。
一方、求人のシェアが大きい飲食、小売り、事務、介護などでは、依然として賃金上昇率の鈍化が続いており、全体としては職種間でばらつきの大きい展開となっています。
企業の賃金に対する姿勢には一定程度共通する要因(不確実性等)がある一方で、春闘による賃金への反映が一巡し、業種・職種ごとの需給バランスや季節要因により、賃金の動きにばらつきが生じてきていることを示唆しています。
方法
Indeed掲載賃金上昇率を算出するためにアトランタ連銀の米国賃金上昇率トラッカーと類似のアプローチに従うが、個人ではなく求人を追跡する。まず、国、月、職種、地域、給与タイプ(時給、月給、年収)ごとに掲載賃金の中央値を算出する。次に、それぞれの国において、職種、地域、給与タイプの組み合わせごとに前年比賃金上昇率を計算し、月次分布を作成する。この分布の中央値をその国の賃金上昇率の月次指標とする。手法の更なる詳細事項及び更新情報はこちら。
Indeed掲載賃金上昇率の算出においては、ベンチマークとなる賃金上昇率や労働需給との相関を、回帰分析等を通じて、常に検証している。詳細は、例えばAdrjan, P. and Lydon, R. (2024) 参照。
2025年の春闘賃上げ率(日本労働組合総連合会が公表している春季生活闘争データ)は名目賃金上昇率(所定内給与)との比較においては、前回のタイミングから、最新数値に変更がないため、トレンドは変わらない。米国では、外部労働市場(転職者)の賃金上昇率と内部労働市場(従業員)の名目賃金上昇率の差が縮小し6月時点で同じ値(4.3%)を示すようになってきている。日本でも同様のトレンドが起こるとすれば、外部労働市場における賃金上昇の優位性が徐々に薄れていく可能性があるが、2025年6月時点では外部労働市場の賃金上昇率が高いため、求職者にとってはまだ仕事探しの好機と捉えられる。

Indeed掲載賃金上昇率を職種別で分析するだけでなく、パートタイムや非正規雇用における動向をより正確に反映するため、時給の掲載データを別途追跡している。
これらの時給の掲載データは、リアルタイムの需給状況に敏感で、年間給与交渉などの制度的要因の影響を相対的には受けにくいことから、短期的な労働市場動向を捉えるのに特に有用と考えられる。
2025年6月時点のIndeedにおける時給の掲載賃金上昇率は4.0%(3か月移動平均ベース)。一方、パートタイム時間あたり名目賃金成長率は2025年4月で4.0%(3か月移動平均ベース)であり、Indeedのデータと2ヶ月遅れているため評価しにくいが、数値は概ね一致しているといえるだろう。