主要ポイント
- 正規雇用率はほぼ全ての年齢層で上昇傾向:25〜34歳(+1.1ポイント)、45〜54歳(+0.9ポイント)などで伸びが大きく、65歳以上でも上昇が見られる。
- 非労働力率は低下し、労働参加が拡大:15歳以上の非労働力率は前年同月比-0.4ポイントと改善傾向が続く。
- 直近の正規雇用率の上昇は内部労働市場による影響が大きく、外部労働市場の寄与は限定的。
2025年2月の総務省「労働力調査」によると、就業率は61.7%(前年同月比+0.5ポイント)、失業率2.4% (前年同月比-0.1ポイント)、非労働力人口率 36.8% (前年同月比-0.4ポイント)と好調を維持しています(結果の概要はこちら)。
その中で特に正規雇用の拡大傾向が継続していることが注目されます。15〜24歳を除くすべての年齢層で正規雇用率が前年同月比で上昇しており、特に25〜34歳(+1.1ポイント)、45〜54歳(+0.9ポイント)等で顕著です。正規雇用への移行は、採用局面による外部労働市場の変化も一部あるものの、新卒時の正規就業の選択増加・継続化、女性の正規雇用の就業安定継続化、非正規からの社内登用、定年延長による雇用継続など、主に内部労働市場で進んでいると考えられます。一方、非正規から正規への転職による流入は限定的であり、正規雇用率の上昇に対するこれら外部労働市場からの寄与は小さい状況が続いています。
正規・非正規・非労働力率の全体動向(15歳以上、15〜64歳、65歳以上)- シニア層(65歳以上)でも正規雇用率が上昇
15歳以上人口を対象に、年齢層別(15歳以上全体、15〜64歳、65歳以上)で、正規雇用率、非正規雇用率、非労働力率の推移を示しています。
- 15歳以上全体では、正規雇用率は33.2%と前年同月比で+0.3ポイント増。非労働力率は36.8%と前年から0.4ポイント減少し、労働参加率が改善。
- 15〜64歳では、正規雇用率が47.7%と前年同月比+0.3ポイント増。人手不足を背景に、より安定した雇用形態への移行が進んでいると考えられる。
- 65歳以上のシニア層では、非労働力率は73.7%(+0.04ポイント)、非正規雇用率は12.3% (-0.05ポイント)と小幅変動。代わりに、正規雇用率が3.8%と前年同月比で+0.3ポイント上昇。高齢者の就業意欲や定年延長を含む雇用機会の広がりが影響している可能性がある。
生産年齢人口(15〜64歳)の中で幅広い年齢層で、正規雇用率は続伸
生産年齢人口の推移を各年齢層別に分けて見ると、学生のアルバイトや新卒の季節性など季節変動を多く含む15-24歳を除き、どの年齢層でも正規雇用率は上昇傾向を示しています(25〜34歳: 65.9% (前年同月比+1.1ポイント)、35〜44歳: 58% (前年同月比+0.2ポイント)、45〜54歳: 53% (前年同月比+0.9ポイント)、55〜64歳: 37.8% (前年同月比+0.7ポイント))。新卒時の正規就業選択の増加の他、女性の正規雇用の就業安定継続化、内部での非正規から正規への登用、正規での定年延長を含めたシニア層の就業継続など、主に内部労働市場での正規雇用へのシフトが背景にあると考えられます。
スポットライト:転職は活発化してきているが、直近の正規雇用率上昇への寄与は限定的
外部労働市場(転職)によって、非正規雇用から正規雇用への純流入が増えて正規雇用率が上昇する可能性もありますが、直近ではその影響は限定的です。
労働力調査(詳細集計)四半期データから、人口に占める転職者数割合を、非正規雇用から正規雇用への転換分と正規雇用から非正規雇用への転換分に分けて算出し、その差分をとると、正規雇用から非正規雇用への転換分の方が大きいことが確認されます。55歳から64歳の年齢層が特に全体に大きく寄与しているため、高齢化が進んでいることの影響はありますが、多くの年齢層で正規雇用への純流入が増えていないことを意味します。
正規から正規への転職は確実に増えていますが、非正規から正規への転職についてはまだ課題が大きいようです。
方法
労働力調査における用語の解説はこちら。労働力調査では、会社役員を除く従業員の雇用契約形態を以下の7つに分類している:
「正社員」「パート」「アルバイト」「派遣」「契約社員」「業務委託」「その他」。
「正社員 」以外の6つのカテゴリーを総称して 「非正社員 」と呼ぶ。
転職においては、総務省「労働力調査(詳細集計)」における前職の雇用形態及び前職の離職時期に関する四半期データを活用。前職の離職時期については過去1年間に離職したケースを活用。