キーポイント
- 職場でのAI利用率は国によって大きく異なる。アイルランドでは雇用労働者の70%が職場でAIを使用していると回答した一方、日本ではわずか18%にとどまる。観測可能な要因の中では、雇用主からの奨励が利用率と強い関連を示している。
- AI利用者は非利用者よりも一貫してトレーニングの必要性を感じている—これは実際に使ってみることで、学ぶべきことの多さに気づくことを示唆している。一方、非利用者のかなりの割合は、AIトレーニングの必要性を全く感じていない。
- 労働者の16%から40%がAIに関与していない—AIを使用せず、AIトレーニングの必要性も感じていない。このグループは高齢者、現場作業職、職場エンゲージメントが低い層に多い傾向がある。
- AI利用者は実質的な時間節約を報告している。80%以上が1日あたり少なくとも1時間を節約しており、その時間は他のタスク、タスク品質の向上、早期退勤、ワークライフバランスの向上などに充てられている。
生成AIの台頭により、仕事の在り方がどう変わるかについて議論が広がっています。しかし、生産性向上や雇用喪失といった見出しの背後には、より複雑な実態が浮かび上がっているように見えます。AI採用は、テクノロジーとの関わり方が大きく異なる労働者グループを生み出しています。
2025年Indeed Workforce Insights Reportのサーベイデータ(8カ国、約8万人の労働者を調査)を分析した結果、AI利用者は職場でのエンゲージメントが高い傾向があることが確認されました。一方で、AIにもキャリア開発にも関与しない労働者層が相当数存在しており、これは雇用主や政策立案者にとって重要な課題となりえます。
世界のAI利用状況
職場でのAI採用は国によって大きく異なります。アイルランドでは雇用労働者の70%が月に数回以上職場でAIを使用していると回答し、オーストラリア48%、ドイツ46%、米国43%、英国41%と続きます。一方、日本はわずか18%にとどまり、フランスは39%で中間に位置します。

国ごとの違いはあるものの、一貫して観察されるのは、個人利用が業務利用を上回っているということです。労働者が職場環境よりも自分のペースでAIに触れることに慣れていること、また業務での利用が必ずしも必要とされていないケースでも個人的な関心は持っていることを示唆しています。
本調査で国間の違いを説明する際には、雇用主の奨励が重要に見えます。アイルランドでは、37%の労働者が「雇用主から強くAI利用を奨励されている」と答えたのに対し、日本ではわずか12%でした。対象の8カ国すべてで、雇用主が積極的に奨励している場合、実際の利用率は大幅に高く、その差はアイルランドの28ポイントから日本の54ポイントまで及びます。

すなわち、組織のサポートが労働者のAI利用において重要な役割を果たしていることを示唆しています—ただし、産業構成、規制環境、技術インフラなど、調査では捉えられていない他の要因も国ごとの違いに寄与している可能性があります。雇用主にとっての示唆は明確です:労働者にAIを効果的に使用してもらいたい場合、労働者の自主的な取り組みを待つよりも、、積極的な奨励とトレーニングが重要だということです。
AIを利用する労働者、利用しない労働者には、どのような違いがあるでしょうか。
AIのトレーニングを求めているのは誰か
AIトレーニングへの需要は国によって大きく異なり、雇用主の奨励パターンと密接に関連しています。奨励率が低い国ほど、トレーニング不足を感じる労働者が多くなっています。日本では雇用主からの強い奨励はわずか12%ですが、AI利用者の61%が「十分なトレーニングを受けていない」と感じています。フランスも同様で、奨励17%に対しトレーニング不足感54%です。対照的に、奨励が高い米国では、トレーニング不足を感じる割合は41%と最も低くなっています。

しかし国レベルで見ると、重要な違いが隠れています。AI利用者は非利用者よりも、AIのトレーニング不足を感じる傾向が一貫して高いのです。この差は8カ国すべてに見られます。
なぜAI利用者ほどトレーニングが必要だと感じるのでしょうか。一つの解釈は、実際に使ってみることで学ぶべきことの多さに気づくということです。利用者は未習得の機能や未開拓の活用法を発見します。もう一つの可能性は、AI利用者がそもそも技術変化に敏感で、継続的な学習に意欲的だということです。
いずれにしても、示唆は明確です。AIに取り組む人々はより多くのサポートを求めており、一方で取り組まない多くの人々は自分が何を逃しているかに気づいていない可能性があります。
では、AIを使わず、トレーニングも必要だと感じていない労働者はどうでしょうか。彼らは単にAIが不要な仕事をしているのでしょうか、それとも取り残されるリスクがあるのでしょうか。
AIに「関与」しない労働者
AIを定期的に使用せず、AIのトレーニングの必要性も感じていない「関与しない」労働者は、雇用労働者の16%(アイルランド)から40%(米国)を占めています。注目すべきは、AIへの積極的な抵抗ではなく、テクノロジーにもキャリア開発にも関心を示さないという点です。

この層にはどんな特徴があるのでしょうか。データから明確なパターンが見えてきます。
- 年齢:年齢が高い労働者ほど傍観者になりやすい傾向があります。英国では55歳以上の50%がこの層に該当するのに対し、18-24歳では40%でした。日本では、注目すべき点として、若年層(18-24歳)でも37%と高く、この傾向がキャリアステージだけでは説明できないことを示しています。
- 職種の特性:現場・生産職の労働者でAI非関与率が最も高く、英国では62%に達します。対照的にナレッジワークの職種では最も低く、国によって幅がありますが8-30%の非関与率です。この職種間の格差は、AI利用が職種によっていかに不均等かを示しています。しかし重要なことに、ナレッジワークの職種でも、日本は27%と高めです。
- エンゲージメントと文化:この層は職場とAIの両方に対する見方が他の労働者と大きく異なります。最も大きな差はAI認識に表れ、「AIが仕事を効率化する」と信じる割合は35-49ポイントも低くなっています。また「AIが雇用機会を減らす」という心配も6-25ポイント低く、AIが自分の仕事とは無関係に感じられることを示唆しています。職場エンゲージメントも差があり、AI非関与層は「職場文化が自分の成長を支援している」と答える割合が7-20ポイント低く、「仕事に目的意識を感じる」割合も国全体で3-16ポイント低くなっています。

「職場で成長できている」(7-20ポイント低い)と「目的意識」(3-16ポイント低い)のスコアが低いことは、AIへの非関与が孤立した現象ではなく、より広範な職場への無関心と結びついているようです。どちらが原因かは未解明ではありますが、相関関係は8カ国すべてで一貫しています。
日本はやや異なるパターンを示しています。他の国々では年齢と職種による明確な勾配が見られますが、日本ではAI非関与が属性・職種でより均等に分布しています—つまり若年層やナレッジワーク系の職種でも比較的高い非関与率を示します。日本では人口構成や職種要因よりも、職場文化やトレーニング機会がより大きな役割を果たしている可能性を示唆しています。
AI利用者が実際に経験していること
AI非関与層は「AIが仕事を効率化する」と信じる割合が35-49ポイント低いことがわかりました。では、AI利用者自身は恩恵についてどのように回答しているのでしょうか。データは、AIを活用していない人々が恩恵を逃している可能性を示唆しています。
時間節約が現実的で大きな効果があります。8カ国すべてで、AI利用者の81-96%が「AIツールで1日1時間以上を節約している」と答えています。AI利用率が最も高いアイルランドでは、利用者の半数近くが1日3時間以上を節約しています。利用率が控えめな国でも、大多数のAI利用者が有意義な時間節約を報告しています。
ただし、すべての人が同じように恩恵を受けているわけではありません。英国ではAI利用者の5分の1が「時間は節約できていない」と答えており、8カ国で最も高い割合です。この差は、単にAIを使うだけでは不十分で、ワークフローへの統合方法が重要であることを示しています。

節約した時間はどこに使われているのでしょうか。AIで生まれた時間の使い道を尋ねたところ、生産性向上と個人的なメリットの組み合わせが見えてきました。
最も多いのは「他のタスクやプロジェクトに取り組む」(21-45%)で、英国が45%で最高、日本は21%で最低です。約3分の1が「現在のタスクの品質と効率を高める」(26-36%)ために時間を使っています。同程度の割合が「同じタスクをより多くこなす」(25-33%)ために使い、既存業務の処理量を増やしています。
「ワークライフバランスの改善」も顕著で、フランスの19%からアイルランドの34%、米国の32%まで幅があります。労働者は節約した時間を「休憩・ストレス管理」(各国19-25%)、「学習・専門能力開発」(15-26%)、「イノベーション・創造的な仕事」(13-25%)にも振り向けています。
アイルランドは、節約した時間を最も積極的に高付加価値の活動に振り向けている国として際立っています:ワークライフバランスの改善34%、学習・専門能力開発26%、イノベーション・創造的な仕事25%です。対照的に日本はほとんどの項目で低い割合であり、労働者がAIを使う機会をより多く得たとしても、まだ十分その効果を引き出せていない可能性を示唆しています。このことは「よりAIのトレーニングを受けたい」動機とつながっているかもしれません。

日本の雇用主にとっての意味
最後に日本に焦点をあててまとめると、4つの優先事項が見えてきます。
- 雇用主の積極的な奨励が鍵です。日本では奨励がある場合のAI利用率は72%、ない場合は19%と、54ポイントもの差があります。この差は8カ国中最大です。ツールの導入だけでなく、明確な奨励と活用事例の共有が重要です。
- トレーニング機会の拡充が急務です。日本のAI利用者の61%がトレーニング不足を感じており、8カ国中最高です。継続的なスキル開発の機会提供が求められます。
- 日本特有の非関与パターンへの対応が必要です。他国ではAI非関与は高齢者や現場職に集中しますが、日本では若年層やデスクワーク職種でも高い傾向があります。年齢や職種を問わない全社的な働きかけが重要です。
- 生産性向上の恩恵は具体的です。日本でもAI利用者の81%が1日1時間以上を節約しています。この時間を創造性や付加価値向上に活かす方向へ導くことで、組織の競争力強化につなげることができます。
方法
本分析は、Indeed Hiring Labの委託によりYouGovが8カ国(オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、アイルランド、日本、英国、米国)で実施したオンライン調査のデータを使用している。調査は2025年5月から6月に実施され、全世界で合計80,936件のインタビュー(各市場最低10,000件)を収集した。このサンプルサイズは、各国で95%信頼水準、誤差範囲±1%を提供している。
サンプリングは無作為かつ代表的に行われ、すべての国で年齢、性別、教育、地域に基づいて重み付けされている。本文で言及しているパーセントポイントの差は、特に断りのない限り、10%水準以上で統計的に有意である。
奨励レベルは3つに分類している:「高い奨励」「低い/奨励なし」「不明」。
- 高い奨励:「AIは会社業務の中核」または「AIは採用され全チームで広く奨励されているが必須ではない」を選択した回答者。
- 低い/奨励なし:「AIは特定部門のみで採用・奨励」「AIは採用・奨励されていない」または「AIの使用を控えるよう言われている」を選択した回答者。
- 不明:「わからない」を選択した回答者。
AI利用者は、月に数回以上AIを使用していると回答した人と定義。本調査の利用率は、他のサーベイにおける最近の値よりも高めの結果である。例えば、セントルイス連邦準備銀行の調査では、2025年8月時点の米国労働者の生成AI利用率は37%であり、Eurostat(isoc_ai_iaiu)では、ドイツが16%、フランスが18%と算出され、本調査よりも低い結果である。日本は、生成AIに関する以前の調査データと似たような結果を示している。これら調査間の差の理由は正確には不明であるものの、方法論の違いを反映していると推測される:例えば本調査では「生成AI」ではなく「AIツール」全般について尋ねており、すべての成人ではなく雇用されている労働者に焦点を当て、特定の期間内での使用ではなく期間を問わずに使用を確認している。